基礎データ
化学名:プロテイルモノグルタミル酸
特徴:水溶性、妊娠初期に必要量が高くなる
過剰症:認められていない
食品:レバー、野菜類などに含まれているが料理段階で失われる葉酸も多い
葉酸の名前の由来
葉っぱの酸と書いて、葉酸。名前の由来は葉っぱである「ホウレン草」から抽出されたからです。英語ではfolic acid(フォーリック・アシッド)といいます。
体内での働き
細胞の新生や正常な赤血球の生成をサポートします。
葉酸は、細胞の遺伝子情報が詰まっているDNAの合成に必要な成分です。
DNAの合成が正常になされることで、細胞はその情報を正確にコピーしながら分裂して増えていき、新陳代謝や十分な成長をはたすことができます。
そのため、細胞増殖の盛んな胎児の健全な発育のためには特に重要な成分です。
また、寿命4カ月の赤血球は、体内で常に新しく作り出されています。葉酸は赤血球のもととなる赤芽球を作るのに関与しています。
赤芽球が正常に作られないと赤血球も正常に作られません。赤芽球は赤血球を作るように働くことで貧血の予防にも関与しています。
葉酸の1日摂取量
日本では成人は240μgとされています。しかし、心身や授乳婦とは別に妊娠を計画している女性、および妊娠の可能性がある女性は1日400μgの摂取が望ましい。
最近の研究から400μgが根拠のある数字とされています。
葉酸の吸収率
食物中の葉酸の吸収率は50%程度。サプリメントとしての葉酸の吸収率は85%程度とされています。
食品中の葉酸は熱の物質との化合物として存在しています。そのため吸収までにいくつかの段階を経る必要があり、サプリメントより吸収率が低いと考えられています。
葉酸と妊娠
妊娠のごく初期に神経管ができますが、これは発達すると脳や脊髄になる器官で、胎児の個々に障害が起きると奇形や下半身マヒなどを伴います。
葉酸は細胞のい新生に必須のビタミンで、このリスクを低減できることが研究で明らかになりました。
妊娠が分かってから葉酸を摂取するのではなく、妊娠の可能性がある段階で、十分な摂取を心がけることが大切です。
葉酸と動脈硬化、うつ、アルツハイマー認知症
葉酸が動脈硬化の予防に重要な役割をしていることが分かってきました。ホモシステインという物質がありますが、これは葉酸やビタミンB6、B12等の働きでメチオニンやシステインという物質に変換します。葉酸が不足するとホモシステインからの代謝が悪くなり、血液中にホモシステインの量が増えますが、この状態が動脈硬化を促進することがわかってきたのです。ホモシステインは加齢に伴って血液中の濃度が上昇するという報告があります。そのため、葉酸の食事摂取基準は高齢者でも成人と同じ量が設定されました。
さらに、日本人の15%は葉酸の欠乏に陥りやすいメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素のTT多型という遺伝子を持っています。TT多型では動脈硬化やアルツハイマー型認知症が起きやすいのです。葉酸を1日400μgとることでTT多型の方も安心して認知症の危険のないホモシステインレベルまで下げられます。
世界の葉酸事情
米国ではすでに6年前からパン、米、シリアルへの葉酸強化を義務つけたために、神経管閉鎖障害は強化前の8分の1に減少。
現状世界の50ヶ国以上の国々では小麦粉に葉酸が添加されている。
葉酸と料理
葉酸は水溶性でゆでるなどの調理によって損失しやすい栄養素です。「五訂増補日本食品標準成分表」のデータから換算すると芽キャベツやアスパラガスは9割程度に、菜の花やブロッコリーでは6割程度に、モロヘイヤ、ホウレン草では4割前後に減少します。
腎臓病の食事療法中の方でカリウム低減のために野菜を茹でこぼしされている方には、葉酸をサプリメントで補給することをお勧めしてます。
自治医科大学名誉教授
女子栄養大学副学長
香川靖雄先生に直接ご教授いただきました。